ベトナムへの進出

今回はベトナムへの海外進出に焦点を当ててみます。

現在日本に在留するベトナム人の数は約37万人となり、中国、韓国に続いて第3位になりました。
かつては、ブラジル人やフィリピン人の在留が占めていましたが、ここ数年で一気にベトナム人の在留者数が上回るようになりました。
現在ベトナム人は日本に対して非常に友好的ですが、両国の交流は遡ること、400年以上もはるか昔に始まっていたと言われています。

当時、ベトナム中部のホイアン市では、日本の商人が「来遠橋」または「日本橋」と名付けられた石橋を建設し、両国の貿易交流での繁栄時期が始まりました。
その石橋は、現在流通するベトナムの紙幣に印刷されています。
ベトナムの正式名は「ベトナム社会主義共和国」、面積は33万1.69㎢で日本の0.88倍です。
人口は9,367万人(2017年[出所:ベトナム統計総局(GSO))、公用語はベトナム語ですが、首都ではレストランやホテルなどでも英語が通じるところもあり、時々日本語の話せるスタッフが在中するところもあります。

今回は、中小企業基盤整備機構の制度を利用しながらベトナムのドンナイ省に工場を設立した計量器メーカーの海外進出のストーリーをご紹介します。

同社は、明治から続く歴史のある会社で、工業用計量器の製造・販売を事業としています。

ベトナム進出のきっかけは、中国企業の価格攻勢に対し、精度を重視し続けていてはモノを作れなくなる危機感を感じたことだそうです。
タイやインドネシアへの進出も検討されたそうですが、すでに有力メーカーがある程度市場を押さえており、激しい競争が見込まれました。
また、ベトナムでは計量器の市場が「出来上がっていない」という将来性に賭け、市場と一緒に成長していけそうだ、と感じたといいます。
進出当初、知人から「ベトナムには競合もないが法体系もマーケットも未整備で買う相手がいないよ。」という忠告を受けたそうです。
そのことを逆に、それなら良いと捉えて2011年に進出に踏み切ったそうです。

中でも最も印象に残ったお話が、ベトナムで問題になっている過積載車両を取り締まるための「走行計量システム」についてです。
ベトナムでは、経済発展に伴い、大幅な過積車両が増加し、制動不良や車軸破損により人身事故が増加しました。
しかし走行計量システムの導入により、警察による検問が効率的になり、取り締まりを徹底する事に成功しました。
このシステムは、走行している過積載車両の重量を自動的に計測し、車の写真と番号を自動的に認識させ車両を認定、車両データはすぐに警察ステーションへ伝達されます。
ベトナム進出した事がきっかけで、製品のうちの一つが尊い命が失われる事を防止する動きにつながったお話に、喜びと感動を覚えました。

ベトナムでは、女性も働く姿が多く見られる事もこの国の特徴だと感じます。
同社も現地法人の社員はほとんどがベトナム人である上、幹部の多くは女性なのだそうです。
最近は、他社の進出が始まり、社員へのヘッドハントがあるにも関わらず、社員達はここで頑張りたいと言う意思を示してくれるそうです。
ベトナム人にとっての転職は、キャリア形成の上でも当たり前の事と言う生の声を聞いたことがありますが、人材の入れ替わりは、海外進出した日本企業にとっての悩みのタネになっているようです。
人件費のことだけを見て進出するのではなく、現地の方に喜んでもらえることも考慮された経営者の思いが、良い結果をもたらしているのだと思います。

従業員と対等の目線で向き合い、一人一人に心づかいする、日本の中小企業では当たり前の人間関係の作り方が強みになっているそうです。