今回は、アメリカをはじめアジア諸国で海外進出された某調味料メーカーの事例をお話しします。
同社は、ソースなどの調味料の開発・製造・販売を事業とする広島県の老舗です。
海外進出先のうちのひとつがムスリム(イスラム教徒)が61%を占めるマレーシアです。
同国でお好み焼用のソースを販売するために、世界初の政府機関であり厳しい認証として知られるマレーシアJAKIM(マレーシアイスラム開発局)より「ハラール認証」を取得されました。
進出国先によっては、効果的に拡販を促進させるために、現地の食文化に対応していくことが迫られます。
多くの海外進出を果たした企業に共通しているのが、その国のルールや規制、好み、文化などをうまく取り入れられている点です。
ちなみに「ハラール」とは、イスラムの教えで「許されている」という意味のアラビア語です 。
野菜・果物・魚・卵・牛乳はハラール(許されている)食品で、豚・犬・死んだ動物の肉、酒などがハラーム(禁じられている)と呼ばれています。(宗派・国・および地域・個人によって詳細の解釈が異なります。)
お好み焼用のソースは、豚肉のエキスなどを使用しているため、日本で製造した商品のままではハラール市場への参入が厳しいそうです。
それらは取り除かなければいけませんが、日本国内で通用している味を損なわず、現地の人に親しまれる味を作るには、どの様な工夫をされたのでしょうか。
現地の人の味覚にあわせながら、原材料からの見直しは企業にとっては一苦労かと思われます。
担当者が豚肉エキスの代わりに魚介系の旨味を中心にいくつもの原材料を組み合わせて味を近づけ、半年をかけて納得するものがを完成させたそうです。
マレーシアの趣向を加味して甘めな味になったそうです。
なお、現地でのお好み焼用のソースを拡販させるための活動が、とても画期的です。
ソースの製造販売がメインでありながら「お好み焼」も同時にPRしながら自社ブランドを世界中に発信し続けました。
屋台で試食を行ったり、海外の現場で実際に鉄板の前に立ち、現地の方々に向けてお好み焼きの焼き方を実演したり、現地スタッフにもその場で焼いて提供し美味しい食べ方を理解してもらうという取り組みをされています。
とあるスーパーマーケットでは、惣菜としてお好み焼きが販売される様になったそうで、ついに海外の家庭の食卓にも日本の鉄板文化が浸透する様になり始めたということですね。
その他の進出先である台湾国内では、お好み焼き、焼きそば、たこ焼きなどが認知度を高めており、台湾での売り上げはここ5年間で約2.8倍に伸びているそうです。
現地では、なんとお好み焼き店舗の開業支援や営業活動において多数の問い合わせがくるようになっており、社員がメニュー提案や情報提供などを行う、専門店舗向けの提案会を台湾で開催したそうです。
創業時から、業務用に開発する商品は、お好み焼店様一軒一軒訪問し、店主の声を聞きながら作り上げ、小売用の商品は業務用に開発した商品を元に一般家庭のニーズや用途を考慮した改良を重ねるという「BtoB」を原点とされています。
この様な業務用と家庭用という異なる二つのリソースを元に商品開発するノウハウを、海外におけるローカライズでも活かされている様です。
最近日本では、ムスリム(イスラム教徒)の訪日外国人の急増により、ハラール市場が年々拡大しています。
日本のスーパーなどでも、ハラール食品の表示が見られるようになり、ハラール食品を取り扱うレストランも見受けられるようになりました。
ムスリムの人が日本を訪れた際に、食品に豚や酒などが含まれていないか確認することも大変ですし、不慣れな国で、ハラール食品に対応した飲食店を探すのも一苦労です。
来たる東京オリンピックに向けて、海外からのお客様に安心して過ごしていただくためにも、ハラール食品の普及促進が必然となっております。